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ポートランドとクラフトマンシップ
FACT  No.01

ポートランドとクラフトマンシップ

人口約60万人。決して大都市とは言えないこの街が、なぜ「アメリカの最も住みたい都市」に選ばれ続けるのか。
工芸、アート、食、環境、アウトドア……
あらゆる分野の「先進都市」として今や世界から注目が集まるポートランドの人々が心に抱き続けるもの、
それは古きを訪ねて新しきを知るクラフトマンシップだった。
クラシックなアウトドアフィールドウェアを扱う老舗ショップのヴィンテージな看板は、誰もが知るポートランドのランドマークだ。
大小のクラフトビールのブルワリーが集まるポートランドでは、アウトドアシートで旨いビールを飲むのがポートランダーの楽しみ。
  • コロンビア川沿い、太平海岸の河口から100km以上離れたポートランド港は木材輸出で栄え、19世紀末まで太平洋岸北西部最大の港だった。
  • 街のサイズが自転車移動に最適であることから、サイクリングカルチャーが盛んなことでも知られる。バイクメッセンジャーも多い。
  • <キーガン&ミーガン>のスタジオにて。古いレタープレス(活版印刷)のアナログ的な魅力にも若い人たちから注目が集まっている。
レザークラフトで人気の<レッドクラウズ・コレクティブ>の工房。
手仕事に必要な道具類が整理された、まさにクラフトマンの工房。

世界を牽引し続ける小さな街、ポートランド。
穏やかなこの街に、ものづくりの神髄を見た。

いったい、どれくらいになるだろうか。
最初は、海外渡航の多い仕事に就いているクリエイティブな職種の人たちから。その後は、文化に敏い雑誌の誌面から。あるいは街の小さなカフェや雑貨店の店先から、この耳慣れない土地の名前が聞こえてきたのは。曰く、「10年ほど前から、地価が高騰するシアトルやサンフランシスコから若いアーティストやクリエイターたちが移住してきて、面白いことが起きている」。
クリエイターたちが集い出した以上、そこに「ものづくり」の風が吹き始めたことは「必然」と言うべきだろう。街にはアトリエやスタジオ、ファクトリーが溢れ、家具や雑貨、アパレルはもちろん、アートから食まであらゆるものが日々、この街から生み出され始めた。
昨年末にダウンタウンにオープンしたばかりの<MadeHere PDX>は、ここポートランドで作られたものだけを売るセレクトショップ。創業スタッフのステファニーは「周りにものづくりをしている友人がたくさんいたから」と開店の経緯を説明する。当初40ほどだったベンダーの数は日々増え続けていると言う。彼女は、この街のクリエイターたちの特徴として「コストをかけずに小さく始めて、自分の目の届く範囲でものづくりを行っている」と説明する。そうした”ローカル目線”のものづくりが今、世界的な注目を集めているのだから面白い。またもうひとつの重要なポイントは、「”手仕事”を通じたクラフトマンシップに再び注目が集まっている」ことだと言う。そこには、この国で一度は失われてしまった技術も多く含まれている。
レタープレス(活版印刷)などのプリンティング工房を営むユニット<キーガン&ミーガン>は、ヴィンテージな機材を廃業する印刷工場から引き取り、新たなアイディアを加え使い続けている。そう、彼らは過去のアナログ的遺産を再生するだけの復古主義者ではない。
レザークラフト集団<レッドクラウズ・コレクティブ>がナチュラルな鞣しと丁寧な縫製によって作り出すiPhoneケースは今やポートランドの大ヒットアイテムだ。
<シーシー・モーターサイクルズ>はカスタムバイクとコーヒーショップを融合させる、これまでにないユニークな形態の店を定着させた。
彼らすべてに共通するもの、それはイノベーションを求めるフロンティア・スピリット。ローカルに向かうことでグローバルに支持され、手仕事に回帰することで先進的な価値を切り拓く。そんなものづくりのダイナミズムが、この小さな都市の隅々にまでみなぎっている。
  • 印刷工房<キーガン&ミーガン>のケイティ・ミーガンとキーガン・ウェンクマン。追求しているのはレトロな技法ではなく、高品質な印刷と2人は言う。 Keegan & Meegan & Co.
    17 SE 3rd Ave.
    503-206-7821
    keeganmeeganco.com
  • <MadeHere PDX>の創業スタッフ、ステファニー・メリオテス。食品から革小物まで、この街のクラフツマンシップがひと目で分かるショップだ。 MadeHere PDX
    40 NW 10th Ave.
    503-224-0122
    madeherepdx.myshopify.com
  • ノースイーストの工房でレザーのウォレットやバッグなど日用品を手作業で作る<レッドクラウズ・コレクティブ>オーナーのセス・ニーフス。 Red Clouds Collective
    1454 NE Prescott St
    redcloudscollective.com
  • マニアックなカスタムバイクの工房とコーヒーショップが合体した<シーシー・モーターサイクルズ>オーナーのトー・ドレイク。 See See Motorcycles
    1642 NE Sandy Blvd.
    503-894-9566
    www.seeseemotorcycles.com

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