KAI FACT magazine
日々変化していくソウルの経済や文化は、スピード&ミックスで猛進する。
FACT  No.10

日々変化していくソウルの経済や文化は、スピード&ミックスで猛進する。

ソウルっ子たちが口を揃えていう「スピード感」。
都市開発、ものづくり、ファッション、ビューティー…すべての側面において、驚異的なスピードで展開していく。
それは流行に敏感な韓国の国民が求めているからに他ならない。
好奇心旺盛な国民性によって、韓国は迅速に全てを創造し、急速に成長してきたのだ。

かつて野球場やサッカー場があった東大門運動場の跡地に、2014年にオープンした「東大門デザインプラザ」。ザハ・ハディド氏による曲線が特徴的な建築で、特に夜間ライトアップ時は近未来感たっぷり。ソウルのアート・デザインの発信基地となっている。

韓国を代表するアミューズメントパーク「ロッテワールド」。その一部「マジックアイランド」はまるで湖に浮かんでいるように見える。他に室内型の「アドベンチャー」もあり、天候を気にせず遊ぶことができる。

  • かつて靴製造地区だったソンスドン。その倉庫や工房の跡地をカフェやギャラリーに改装したショップが、ここ数年で次々とオープンしている。「デリム倉庫ギャラリーCO:LUMN」もそのひとつ。無骨な空間にアートとコーヒー。それがソウルのトレンドだ。

  • 自由にトッピングを楽しめるアイスクリーム専門店「REMICONE」はシンサドンエリアにある。街路樹の道という意味の「カロスキル」、さらに1本裏手の「セロスキル」にもたくさんのアパレルや飲食店がひしめき合い、一大ショッピングエリアとなっている。

サンフランシスコ生まれの「Mr.Holmes Bakehouse」は、クロワッサンとマフィンのハイブリッド「クロフィン」が人気。その世界2号店がカロスキルにオープン。流行の早いソウルを象徴している。

  • 2013年に開館した「国立現代美術館ソウル館」。周辺には景福宮や昌徳宮などの文化遺産が点在しているので、景観に配慮した低層な造りになっている。韓国の伝統文化と現代美術を一緒に感じることができるエリアだ。

  • カロスキルにあるコスメショップ「VILLAGE 11 FACTORY」の店外には、自動販売機で顔パックなどが販売されていた(季節によって変わる)。歩行者の足を止めさせるユニークな仕掛けがおもしろい。

イテウォンにある「Mmm(ウム)レコード」では、レコードショップやイベント、DJによるアート展などを開催。オーナーのチョン・ウチさんはレコード文化を守るために尽力している。

2005年に大規模リニューアルを遂げた「Nソウルタワー」。南山(ナムサン)の頂上に建っているので、展望台からはソウルの街を一望できる。麓からのハイキングも気持ちいい。

スピード&ミックスでつくる
韓国のクリエイティヴシーン

好奇心旺盛で、何でも受け入れる懐の深いソウルっ子の間では、世界的に流行しているライフスタイル系ショップが人気だ。そのシーンをリードしているアートディレクターがいる。キム・ミジェさんだ。主に飲食店の空間、グラフィック、デコレーションなど全体を統括しながらブランドコンサルティングを行っている。「ソウルが他の都市と大きく異なるところはスピード感です。『時間的に不可能でしょ』というオーダーがすべて実現していきます。他都市のクリエイターと一緒に仕事をすると驚かれますね」。流行を生み出す側も、追う側も、ともに速い。

若手のアーティストや作家を紹介する場やメディアをつくることで、新しいジャンルを開拓し育てようとしているのはチョン・ウチさん。「韓国のクリエイティヴシーンは、段階的ではなく、一気に成長してきたので、その過程で様々なものがミックスされました。こうして生まれた韓国のミックスカルチャーは世界的に見てもかなりおもしろいと思います」。自身でもフード、グラフィックデザイン、映像、写真、レコード店と幅広い事業を展開して、ミックスカルチャーを体現しているようだ。

そのようにミックスされた文化の中に、ソウルらしい個性や本質を発見するのは一見難しいように思える。しかし深掘りするとおもしろいものがたくさん出てくると言うのはイラストレーターのユン・イェジさん。彼女が考える韓国のスピード感は、美しさと醜さの背中合わせらしい。「無茶なスケジュールの仕事がループのようにやってきて、休みや区切りを与えてくれない醜さ。逆に言えば、それをこなしていければ成長も早いという美しい一面もあります」。厳しい速さの中でソウルクリエイティヴは育つのかもしれない。

ソウルのクリエイティヴに対して、速さだけでなく「もっと質を高めていきたい」と評するチャ・ヘヨンさんは、クリエイティヴ・ディレクターとして若手作家とともにビジネスを展開している。彼女が率いる「スタジオ・コンクリート」では、アーティストや作家の感性を大事にしたビジネスを掲げており、企業側とシナジーを生み出せるかどうかで仕事を決定する。「クリエイティヴ」を大切にしたものづくりへと変わっていく過程なのだ。

ソウルのスピード&ミックスなものづくりは、ユニークだが成長段階。これからの進化が楽しみだ。

  • デザイン会社「Artment.dep」のアートディレクター。「TEA Collective」というティーカフェを立ち上げ、事務所も併設している。15〜20歳までは東京で過ごした。

  • アート雑誌「Eloquence Magazine」やレコードショップ「Mmm(ウム)レコード」のほか、アート、写真、フードなど幅広く手がけるクリエイター。

  • イラストレーター。イギリスの大学院でイラストレーションを学びソウルで活動。ファッション関係や映画祭・音楽祭のポスター、本の装幀などを手がけている。

  • 俳優のユ・アインなど、様々な若手アーティストが参加している「Studio Concrete」のCEO。ギャラリー・カフェ経営、ファッション、アートディレクションが柱。


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