KAI FACT magazine
FACT  No.05

トウキョウをワールドスタンダードに
引き上げるクリエイターたち

東京のクリエイターの多くは、海外への視点を当たり前に持っている。
かつて東京が世界から影響を受けた、文化という土台。
その上に伝統や最先端技術、クラフトマンシップ、社会性など、多様な感性を取り入れて、
東京でのモノ・コトづくりを世界基準へと進化させているのだ。そんな東京のクリエイターたちを紹介する。

東京の空気と世界の空気。
ふたつを取り入れるセンスを養う。

 世界に東京をアピールし、また世界から東京に取り入れる。東京のエンターテインメントは、実に複雑な要素によって練り上げられている。マドモアゼル・ユリアさんは、日本でも多くのファッション系のパーティでDJプレイをし、世界各国でのプレイ経験も数知れない。「学生の頃から海外に住みたいと思っていました。現状にしばられずに、知らないことを知っていくのが好きなんです」と好奇心旺盛。だからどんな土地でも対応できる。「各国ごとに選曲は変えますが、その土地に興味を持って飛び込んでみないとわかりません。実際に出歩いて、その土地でいろいろなものに出会うことが大切です」。彼女のDJプレイが柔軟で多様性に満ちているのは、それぞれの土地の空気をしっかり感じているから。それがまた、東京にフィードバックされる。
 一方、演劇でも世界を見つめる目がある。2014年、世界最大の演劇フェス〈エジンバラ・フェスティバル・フリンジ〉にて、『THE SAKE』という作品で好評価を得た演出家の山田淳也さんだ。最新作『infinity』は狂言、日本舞踊、和太鼓と舞台は移り変わっていく。「濃いものをつくりたくて、とにかく詰め込みました。自分にとっては勝負作品。海外進出のための、自分のブランディングでもあり、プレゼンテーションです」。イメージが強すぎてしまう和の伝統文化だが、それに臆することなく最前面に押し出し、世界に新たな視点を与えてみせた。
マドモアゼル・ユリア
10代からDJを始め、3枚のミックスCD、2
枚のオリジナルアルバムを発売。
CHANEL、STELLA McCARTNEY、GUCCI、
H&Mのグローバルキャンペーンにも起用さ
れている。2016春夏シーズンからファッシ
ョンブランド〈GROWING PAINS〉を開
始。
ユリアさんがプレイしているのは、開発著しい東東京エリア・八丁堀に新しくできた〈WISE OWL HOSTELS TOKYO〉の地下にあるバースペース〈HOWL〉。ホテルとプレイスポットの融合という、東京の新しいスポットも刺激的だ。
山田淳也
演劇集団〈円研究所〉、多国籍アートパフ
ォーマンス集団〈66b/cell〉に参加し、
1998年渡米。2004年に帰国後、DRUMCA
に参加し、ライヴ演出や企画プロデュース
などを多く手がける。2014年、〈David J.
Productions〉を設立。
2016年8月8日の1日だけ公演された
『infinity』は、舞浜アンフィシアターと
いう大きな劇場を使った入魂の1作。強者揃
いの伝統芸能の演者をまとめるのは大変
だ。開演直前の最終チェックにも余念がない。

海外のルーツを取りこみながら
独自のプロダクトに練り上げる。

 京の生み出すユースカルチャーのプロダクトは海外からの影響が強いが、それを深く取り込みながら、独自性を追求している。日本ではまだまだ浸透していないルームウエアやパジャマ、寝具などを中心にしたブランドが〈プライベート・スプーンズ・クラブ(PSC)〉だ。「一人暮らしの部屋など、ベッドが占める割合が大きいのに、ベッド周りは気を抜きがち。海外みたいにもっと楽しんでほしい」と今村美裕さん。ベッド周りをファッション感覚で楽しめるブランドは、日本にはまだ多くない。この秋にはマカオのホテル〈マンダリンオリエンタル〉の部屋でPSCの寝具が楽しめる。海外のベッドルームカルチャーが日本のファッションセンスをまとって、また海外へと輸出されるのだ。意外なものを組み合わせたときに、面白いものが生まれることがある。
 宮大工の大場康司さんによる〈大場組〉は、社寺建築を手がけながら、一方で〈ウッデントイ〉としてスケートボードやジャンプランプなどをつくり始める。「つくっていく上でのテンションはどちらも変わりません。道具も、線の出しかたも同じ。宮大工の特徴である屋根の曲線をつくる技術は、スケートボードにも生かされているかもしれません。社寺に負けない美しく自然な線を心がけています」。日本の伝統文化とアメリカのポップカルチャー、それを同等に語れる目線が、大場さんのクリエイティビティだ。
今村美裕さん
2015年3月にデビューした〈Priv. Spoons
Club〉を、スタイリストの山脇道子さんな
どとともに立ち上げたメンバーのひとり。
現在はゼネラルマネージャー。かつては歌
手活動をしていた。
パジャマ、ルームウエア、寝具など部屋を
彩るさまざまなものを扱っている。女性向
けが中心ではあるが、シンプルなデザイン
も多く、男性でも使いやすいものも多数揃
えている。店内は窓が大きく明るい雰囲
気。(写真右は2016春夏の商品です)
大場康司さん
24歳から宮大工の修業を始める。30歳で建
設会社に入社し仏具や家具製作、現場監督
などに携わる。37歳で独立し〈大場組〉を
設立。同時に〈WOODEN TOY〉としての活
動も始める。
道具の管理の美しさや加工におけるなめらかさは、さすが日本が誇る宮大工である。繊細な仕事が美しい曲線を生み出している。ロゴの焼き印を入れたら、〈WOODEN TOY〉のスケートボードが出来上がり!

より本能に訴えかける
コミュニケーションを目指して。

 クリエイティヴエージェンシー〈グレートワークス〉はスウェーデンが発祥だ。それだけに日本国内と海外での仕事の違いを理解している。「日本は行間を読むのが好きなんです。しかしそういった〝ハイコンテクスト文化〟は海外では理解されません。どの国でも通用する伝え方を意識しています」というクリエイティヴディレクターの鈴木曜さん。だから、より本能に訴えかける表現を考えていく。すると必然的にアウトプットはシンプルになっていく。「観光面もそうですが、否が応でも、世界がこちらに近づいてきています。そういう局面になって、多様性を受け入れながら日本というアイデンティティをどう表現していくのか、これから試されると思います」。
鈴木曜さん
ストックホルム、コペンハーゲン、ニュー
ヨーク、上海、そして東京が拠点のGREAT
WORKS。鈴木さんは2011年入社。貝印の
プロモーション動画やアプリなど、様々な
クリエイティヴを請け負っている。
右上/日頃の手描きのラフスケッチから、独特のアイデアが生まれる。手を動かすということは重要な作業。右下/「もう広告でなくても構わない。クリエイティヴで世界を変えていきたい」と話す代表取締役の山崎佑司さん。左上/山崎佑司さんと打ち合わせ。まだ公開できないプロジェクトについて密談中。左下/鈴木さんが開発した3D最新技術を使った東芝の映像が、ハリウッドの動画広告コンペティション「A-list AWARDS」を受賞するなど、トロフィーの数々。
貝印 旬Cool JAPANムービー寿司

伝統のある食世界に飛び込み
多様性のあるフレンチに挑む。

 ヨーロッパで修業して、その土地にある素材の違いが味や料理法に表れることを感じたという生江史伸さん。「異なる文化を知ることで、相手に対しての敬意を示すこともできます。そのうえで自国の食にプライドを持って大切に育てていくことは、ひとつの平和のカタチだと思っています」。どれが優れているということではなく、お互いをリスペクトすることが未来へとつながるのだ。そんな生江さんは、なるべくお客さんの前に出ることを心がけている。「同じように褒められていても、気を遣われているのか、心からの言葉なのか。伝え聞きではわからなくても、対面すると気がつくことがたくさんあります」。様々な考え方にきちんと向きあい、受け止めていくから、生江さんのフレンチには、フランスという地域を越えた多様性があるのだ。
生江史伸さん
ミシェル・ブラスなどに師事し、2009年に表参道にあるレストラン、〈L’Effervescence(レフェルヴェソンス)〉をオープンする。エグゼクティヴシェフ。
シェフにとって大切な道具である刃物。かつて鴨の皮をもっとうまく切りたいと思っていたところ、「メスがある」と思いつき、料理でありながらも貝印の医療用メスを愛用し始めた。包丁では難しいミリ単位のカットや、曲線的アレンジ、刃の切っ先を使った点の加工が可能になった。
土、木、漆喰など、国産の天然素材をふんだんに使った店内は心地いい。どんどん深みを増していくだろう。食材にもほとんど国産を使用している。
●L’Effervescence(レフェルヴェソンス)
東京都港区西麻布2-26-4
+81(0)3-5766-9500
http://www.leffervescence.jp/

東京特集  記事一覧

  • この記事をシェアする
  • twitter
  • facebook
  • printerest