男とヒゲの歴史

ヒゲは男性の生き方と無縁ではないと歴史は語っているようです。
平安時代半ば過ぎまでは、僧侶以外はヒゲを生やす風が一般的であったようですが、
その後、徐々にヒゲを剃る風習が広まり始める一方で、武士はヒゲを蓄え続けていたそうです。
近現代はファッションアイテムの一つとしても考えられ、
生やすも、生やさずも個性とされております。
そんな男とヒゲの歴史を少し振り返って覗いてみましょう!

男とヒゲの歴史

戦国〜江戸のヒゲ事情!ヒゲを生やせない時代があった!

江戸のヒゲ事情

戦国武将とヒゲ

武士が権力を握っていた時代を反映し、多量のヒゲを蓄え、武威を誇示。女性に対する男性を示す記号だったと思われます。

江戸武士とヒゲ

ところが江戸期は、上層の武士からヒゲを剃る習慣が広がり、1670年には徳川家綱による「大ひげ禁令」で、ヒゲを蓄えるのが制限されます。泰平の世では、男性の概念が変わったのでしょうか。

文明開化でヒゲ解禁?明治時代のヒゲ事情

明治時代のヒゲ事情

外国人の到来

江戸期は「ヒゲ=野卑」という考え方が支配的でしたが、幕末の外国人来日を機に変わります。立派なヒゲを蓄えた姿から、「ヒゲ=文明」のイメージに転換していきました。

文明開化と断髪・ヒゲ復活

近代化で月代を止めて断髪する動きとともにヒゲも復活します。明治天皇が1873年に断髪し、洋装にヒゲを蓄えた姿が外交儀礼で撮影されました。当時のトレンドを象徴しています。

モダンボーイにはヒゲがない?ヒゲなしモテ男の昭和モダニズム!

ヒゲなしモテ男の昭和モダニズム

アメリカのヒゲなしと安全カミソリ普及

1895年に安全カミソリが発明。第一次大戦では米軍兵士がヒゲソリの習慣を身に着け、日常生活にも広がっていきました。

「モボ」はヒゲなし、「モガ」はヒゲを忌避

昭和初期の日本でも、アメリカ映画の影響などにより、「モガ」(モダンガール)と呼ばれる若い女性がヒゲを忌避し、「モボ」(モダンボーイ)と言われた男性もヒゲなしが増えます。当時の日本映画でも男性がヒゲを剃ったらモテモテになった話が制作されました。

多様な「ヒゲ」の漢字

「ヒゲ」を漢字で表すと、生えている部位などによって、様々な文字があります。唇の上や鼻の直下にあるのは「カミツヒゲ」などと呼ばれ、「シ」の音でる「頾」や「髭」と表記します。頬にある「ホホヒゲ」は、漢字で「髯」「髥」など「ゼン」と呼ばれる漢字です。アゴヒゲは「シモツヒゲ」「シタヒゲ」などと呼ばれ、漢字では「須」「鬚」と表記、音では、「シュ」または「ス」と呼ばれます。そして、両耳にあるヒゲは「鬍」(コ)。唇の直下にあるヒゲは「承槳」(ショウショウ)と言われます。

軍国主義でヒゲ復権!戦時中のヒゲ事情

戦時中のヒゲ事情

寺田四郎談「戦争とヒゲ」

軍国主義が台頭すると、ヒゲ愛好家たちが運動を展開。新聞記事やラジオ番組で「ヒゲの復権」ともいえる論調が広がり、1938年には読売新聞が「戦争とヒゲ」と題した記事を掲載しました。

「戦争とヒゲ」の関係の現実

ヒゲについては軍隊で明確な規則はなかったそうです。勇猛さや威厳を示すためにヒゲを生やす将校もいましたが、一般兵士は安全カミソリを使っていました。

高度経済成長下のサラリーマンはヒゲなしが当たり前?

高度経済成長下でのサラリーマンとヒゲ無しの拡大

高度経済成長のサラリーマンはヒゲなしが当たり前?

戦後はヒゲ事情が一変します。1953年の読売新聞には「朝のヒゲ剃りはエチケット」との記述があり、高度成長期には、ヒゲ剃りがサラリーマンのたしなみとして定着していきました。77年11月の「週刊小説」では、サラリーマン社会とヒゲの関係を論じた記事が掲載され、大手商社広報の「若い社員で伸ばしている豪傑はいない」というコメントが紹介されています。東京都が1973年に行った調査でも男性の「ヒゲ率」は5%にとどまりました。

ヒゲの時代に、ヒゲを生やさない理由?

立派なヒゲを蓄える政治家や軍人が多かった時代にあって、あえてヒゲ無しのスタイルを貫いた人たちもいます。松平正直(1844-1915)は、山県内閣での内務次官を辞した後にひげを剃りましたが、「官吏を止めて髭なぞは要らない」と語ったとされます。日清・日露戦争で活躍した陸軍軍人の大山巌(1842-1915)もヒゲ無しの一人。若い頃のフランス留学体験の影響などが考えられています。

昭和のヒゲに込められたメッセージ!反体制の若者のヒゲブーム

反体制の若者のヒゲブーム

非体制・反体制の記号として登場した若者のヒゲ

ベトナム反戦などで学生運動が盛り上がった60年代後半、サラリーマン社会に異議を申し立てるように、ヒゲを生やす人々もいました。当時の「週刊朝日」(69年1月24日号)には、「ヒゲ・ブームを支えているのは、権力とは無縁のヒッピー族やジャズバンド・マン、アングラ族」という記述がある。折しも、キューバ革命でカストロを支えたカリスマ的革命家、チェ・ゲバラのヒゲを蓄えた勇姿が、反体制の若者たちを惹きつけたようです。

現代のヒゲ事情!「おしゃれ」と「男らしさ」を表現

現代のヒゲ事情

「おしゃれ」と「男らしさ」を表現するヒゲ

反体制の文脈以外にも「おしゃれ」としてヒゲが見直された動きもありました。服飾評論家の原圭一郎氏は、戦国・明治に次ぐ「三度目の流行」と捉え、次のような指摘をしています。

「≪ヒゲ≫・・・・・・それは、オトコがオトコであるための主張だ。古くはオトコの地位や権力の象徴であったし、現代にいたって≪ヒゲ≫はハイセンスなおしゃれの小道具として復活した」(「平凡パンチ」66年12月26日号)。

「男のアイデンティティー」×「ヒゲ」の未来

ヒゲの未来

また、1990年代に入ると「無精ヒゲ風」ブームがやってきます。「男のアイデンティティー」をおしゃれに表現したのが「無精ヒゲ」と考えられているそうです。
「メンズノンノ」2002年11月号のグラビア写真には中田英寿・ベッカム・イチローをはじめとする多くの無精ヒゲの男性の写真が載り、流行が長期化していることが分かります。
最近では、「スーツに似合うヒゲ」といった企画も雑誌の特集でくまれはじめており、「“手入れしたヒゲ”」はファッションの一部といった考え方も広まり始めているようです。
これからのヒゲの未来は一体どうなっていくのか楽しみですね!

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