鈴木曜さん & 宮田取締役 地球の歩き方対談

地球の歩き方×紙カミソリ®コラボレーション対談

2021年に発売された「紙カミソリ®」。プリントしやすい紙の特性を活かして、すでにアーティストや俳優、企業などと、さまざまなコラボレーションがおこなわれています。そして紙カミソリ®が次にタッグを組むのは、老舗旅行ガイドブック「地球の歩き方」。紙カミソリ®のボディにイエローとレッドのおなじみの配色が光るモックアップも完成しました。紙カミソリ®を生んだ貝印のCMO・鈴木曜と、「地球の歩き方」元編集長で現在、株式会社「地球の歩き方」で取締役を務める宮田崇さんが語ります。

#誰もやらない。だから選んだ。そうして生まれた紙カミソリ®

#誰もやらない。だから選んだ。そうして生まれた紙カミソリ®

宮田崇さん(以下、宮田):おお、とうとうここまで来ましたか!これはすごく楽しみですね

鈴木曜(以下、鈴木):「地球の歩き方」の表紙で知られるイエローとレッドの配色が、想像していた以上にかわいいですよね。そもそも昨年、紙カミソリ®をホテルのアメニティとして展開させてもらった時に、海外の方から「旅にいいんじゃないか」というフィードバックがあったことがコラボレーションのきっかけでした。

宮田:で、旅ということで「地球の歩き方」と繋がったと。私はこれまで世界中を旅してきて、町を歩いてホテルに帰ってからお風呂で1回、翌朝に「今日もがんばるぞ!」ともう1回、ヒゲを剃るのが習慣でした。しかもそのカミソリが、「地球の歩き方」のデザインだったら、ワクワクしないわけはない。それがほんとに形になってきてね。世の旅人たちがヒゲを剃りながら、「今日一日何が起こるんだろう」と期待に胸を膨らませるようなものができそうです。

鈴木:僕は昔から「地球の歩き方」を手に旅に出かけているので、絶対信頼をしてるっていうか、なんか相棒感がありますね。とくに働いていたこともあるスウェーデン、フィンランド、ノルウェーあたりはほんとにこの本にお世話になっていた。これがあると、なんか安心するっていうか。旅先ではいつもこれを読みながら、眠りについていました。そんな大好きなガイドブックなうえ、『 JOJO ジョジョの奇妙な冒険』やレトルトカレー、3COINSなど、興味深いコラボをたくさんやっていらっしゃるのもすごい。これも今回のコラボを実現させるのに重要な後押しになりました。

宮田:うちの編集部が2020年に、学研グループに事業譲渡されたときに交わした事業計画に書かれたミッションは「1年間で100冊の本を作る」というもの。でもコロナがまだ収束していないときだったので、ガイドブックだけで100冊はむずかしい。そこで、みんなの頭に浮かんだ「地球の歩き方」のコラボ先をとりあえず全部リストアップして、上から順に当たってみようとなったんですね。そうして生まれたのがジョジョだったり、最近ですとディズニーだったり、宇宙兄弟だったり。うちの場合は、そうして苦しまぎれで起こしたイノベーションのようなものでしたが、貝印さんも歴史的に攻める商品をいろいろ生んでいるそうですね。

鈴木:そうなんです。老舗企業というイメージが強いですが、実は過去には三枚刃カミソリなど世界初の商品を出してきた。その貝印が創立110周年のときに、新しいカミソリを作ろうというプロジェクトが立ち上がりまして。社内公募で寄せられた企画のひとつが、この紙カミソリ®の元になったアイデアでした。貝印は使い捨てカミソリのナンバーワンメーカーなので、逆に考えるとそれだけカミソリのプラスティックゴミを出しているメーカーとも言える。別の素材を使った開発したいと考えていたところで、紙というアイデアが出てきたんです。私はその頃、マーケティングのトップだったので審査に加わりましたが、誰もやりそうにないブルーオーシャンというところもいい。もう紙カミソリ®一択、な感じでしたよね

#「地球の歩き方」編集部に起こったパラダイムシフト

#「地球の歩き方」編集部に起こったパラダイムシフト

宮田:1年100冊の目標もそうですが、やはり計画はぶち上げるまでは意外とトントン拍子に運ぶのに、そのあとが大変という。うちでも、リストアップした希望的コラボ先に何軒断られたことか……。何なら返事もくれない企業も少なくなかったですから。

鈴木:こちらも企画が決まってからの苦労が多かったですね。紙の質とか、折り方とか、何百通りも試作品を作って、最後に落ち着いたのがこの形でした。そうしてアイデアを形にする過程でも、多くの学びがありました。さすが老舗企業。僕のどんなわがままなアイデアでも、この会社では誰かがちゃんと安心と安全を備えたモノの形にしてくれるんですよね。ブランド力だけでないその実力には驚かされた。「地球の歩き方」も、コロナで海外に行く人がいなくなった苦境が、多彩なコラボ企画につながったんですよね。ちなみに非常事態宣言のときの編集部はどんな様子でした?

宮田:沈んでいる部員は、ほとんどいなかったですね。その代わり、どんなときでも手を動かさないと滅ぶということだけはわかっていたので、何もしないで嵐を過ぎ去るのを待つという時間もなかった。で、我々が唯一できたのは、御朱印シリーズという国内版の書籍を、とりあえず全スタッフで作ろうと。例えばフランス編とパリ編を30年以上作っているスタッフに「生まれはどこですか?」と聞いて、じゃあ、今回だけは生まれ故郷の四国の神社編を作ってください、みたいな。そうこうしているうちに、東京五輪のために初めて作った国内版である東京版が当たって、光が差してきたんです。そしてその2か月後に、事業譲渡という発表があったんですよね。

鈴木:大手出版社の学研グループに入って、やはり変化はありましたか?

宮田:ええ、それはもう。縄文時代から平成にジャンプしてきたぐらい違います(笑)。今振り返ると、つくづく昔は自由気ままにやっていた。それをやっと、きちんとした会社の枠にはめてもらった。とくによかったのは、学研がいろいろなM&Aを経験している会社で、こちらの企業文化や風土を最大限尊重してくれることでした。「地球の歩き方」というブランドが、らしく活躍できるようにサポートしてくれる相手だったことはほんとによかったです。まあ細かい事を言えば、服装やビジネスマナーなどが決まっていて、めんどうなこともありますけど。そうそう。曜さんのその金髪も、怒られたりしません?(笑)

鈴木:ほんとにみなさんいい人で、怒る人なんていません。ただし、116年も続いてる 老舗企業で、初の金髪役員ですからね(笑)。それ大丈夫か?とか人に冗談交じりで言われたことはありますね。でもそういうときは、冗談交じりにこう返すんです。「じゃあ今この時代にアメリカの人が役員になったら、どうするんですか?」って。昔から比べたら、いろんなことが自由になっていますけど、それでもときどき歴史のある日本企業らしいところもあるのかなと思うこともけっこう。

宮田:僕も正しいメールの書き方を、こちらにきて初めて学んだんですよ(笑)。「いつもお世話になっております」から始まるメールとか。時間の無駄では?と思うこともありますが。

鈴木:そうそう。僕も本文は「了解」だけのメールが少なくないです。

#日常から「旅」という非日常へ。非日常から「カミソリ」という日常へ

#日常から「旅」という非日常へ。非日常から「カミソリ」という日常へ

宮田:事業譲渡後、みんなに言っているのは、「一緒に仕事をしている人の悪口禁止、否定禁止」ということ。すごくシンプルな話なんですが、組織が変わった時に、できないと否定したり、人の悪口を言ったりすると、それは自分ができない言い訳を探すきっかけになってしまう。それよりどう実現するかに専念してほしいと思っていました。そして今はこれが我々の社是みたいなものに。例えば新人がこんなことやりたいと言ったとして、うちでは「それは10年前に失敗したからダメだ」とは絶対に言わない。その代わり「今だったらできるかもしれないから、このときの失敗の反省点を教えるね」とアドバイス。そんな会話が、社内で普通に出てきているのは、いいですよね。

鈴木:周囲の方に言わせると、宮田さんはその突破力にも定評があると。

宮田:どうかなあ。でも真っ暗な中に光の筋が見えてきたときの、シフトの素早さでは自信があります! あれ、私も曜さんの近くの方に、同じようなことを聞きましたよ?(笑)。

鈴木:僕の場合、突破力かどうかはともかく、何事もポジティブに考えるようにはしてますね。そもそもできないことって、この世の中にはないと思っている。普通だったら「無理!」で終わるところを、「どうやったらできるか」に変換するようにしています。「地球の歩き方」とのコラボレーションもそうですよ。僕らのブランドっていうのは、日常生活にすごく溶け込んでいるので、これを非日常の世界に引っ張り出してくれる相手を探していたんです。使い捨てカミソリと非日常体験。ちょっと考えても、簡単ではないですよね。でもこうして旅という非日常に引っ張り出してくれるものに出会えた。」

宮田:今の曜さんの話を聞いていたうちの商品化担当の人間が、すごくニヤニヤしてうれしそうなんです(笑)。実はちょうど1年前の会社の全体会で、私たちは今の話とまったく逆のスローガンを掲げています。「非日常から日常へ」です。旅って、出かけたとしても、その1年の365日のうちせいぜい30日ぐらいじゃないですか。残りの335日、どうやってその人の日常に食い込むかっていうのは「地球の歩き方」の大きなテーマになっています。これまでも生活者の日常に入り込みたいという想いで3COINSさんとのコラボといった商品化を進めてきたわけですが、こうして「紙カミソリ®」とご一緒させていただけるのは、「地球の歩き方」としてより一層日常に入り込むことができるのではないかと確信して、ワクワクしているところですね。旅先で、朝の髭剃りをしているときのような気持ちです。

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