ART

コラージュアーティスト・河村康輔に訊く「向き合う」ことの深み

ゼロからイチへ、オリジナルなものを作り出していく、その前段階。クリエイターたちはどういった過ごし方をしているのだろうか。自分と向き合うこと、そこから生まれる歓び。その向き合う直前にある時間/行為こそ、知りたくなる。

作品制作において、逆にそれがないと完成が成立しない。そのために整える」と語るのは、アート、音楽、ファッション、広告とさまざまな領域で先鋭的な表現を発表するコラージュアーティスト/アートディレクターの河村康輔だ。AUGER®︎のローンチに合わせて、同ブランドをモチーフとしたアート作品を制作してもらったが、そこでは「日常のなかで使うものだからこそ、その動き自体やそこから生まれる躍動感を意識した」という。インタビューのラストではシュレッダー・コラージュ3連作も披露。新たな表現が生まれる瞬間を追った。

—制作に入っていく前段階のところから訊いていきたいのですが。入りこむためのルーティンなどはあったりしますか?

ツメを切ること。昔からツメを切るのが大好きなんですよね。白い部分が残らないくらいまで完全に切らないと気持ち悪くてイライラする。なんだかんだ2日に1回くらいは切っているかも。(コラージュをする)作業的にはツメはあったほうがラクなんですけどね(笑)。

作品制作に集中しだすと、ほぼ休憩しないんですよ。煙草も吸わないし、なにも食べないまま3〜4時間くらいぶっ続けでやっていたりする。でもそれをやりすぎると、自分のなかで流れ作業みたいになってくるので、そうならないようにはしています。

—制作に集中しているときは、作品と向き合っている感覚ですか? それとも自分と向き合っている?

どっちだろう。無の状態かもしれない。最初は考えたりもするけど、気がついたら感覚だけで動いている。無意識に手が動いている状態というか。そうやって出来上がったものを改めて冷静に俯瞰したときに、そこで初めて自分とも作品とも向き合っている気がします。

—コラージュという手法は、素材とも向き合うことになりますよね。

そういった意味でも、素材を選んでいるときが一番大切ですね。直感でつくっていく前の、スタートのところ。その段階ではとくに決めていないので、素材になりそうなものを探すために適当に手にとった本をパラパラと捲っていく。1冊目に出てくるかもしれないし、50冊目でやっと「これ使えそう」ってなるときもある。見る日によっても違いますしね。事前に頭のなかで構成を組み立ててやってみようとしても結局うまくいかなくて。ゴールが見えていないほうが自分でも楽しいし、そこで初めておもしろいものが生まれる

—つくっていて、「ここが完成」という明確な地点は出てくるものですか?

うーーん。自分のなかで「気持ちいい」ところ、ですかね。その尺度が個性になっているんだと思うんですけど。おもしろいもので、たった1ピースで全然変わってくる。だから、自分のなかの「気持ちいい」に忠実にいられるようにはしています。

—今回のコラボレート作品について。モチーフとしたのはAUGER®のブランドロゴとカミソリ、そしてツメキリです。

「動き」というものが重要だった。使う上で、止まっていることがないアイテムじゃないですか。かつ、短期集中的なもの。動いたとしても1日のうちの5分もない。自分のなかで距離にしたら(手で10cmほどの幅をつくって)これくらいなんですよね。パンッて跳ね返るような、その速度感みたいな動き。大きな振り幅でゆっくり動いて変化していくというよりは、すごく短い距離で動くものという感覚があった。しかも、とくにツメキリって生まれたときから死ぬまで一生使うものでもある。もっと言うと、最終的に死んだあとにもメンテナンスで切ったりもするじゃないですか。そういった「動きの速度と蓄積」というのがテーマかもしれないですね。ここまで生活に、身体に密着に関わるものってあまりないなって。当たり前のようにあったけど、今回、改めて向き合ってみて、それに気づきました。

—実際にAUGER®を生活のなかで使ってみて、どうでしたか。

最初にもツメを切るのが好きだって話をしましたけど、このツメキリ、2つとも最高ですよね。このメタリックな感じもたまらない。今回のAUGER®のラインナップでは、とくにこのツメキリ(AUGER®︎ ツメキリ M Revolver)が衝撃でしたね。こだわりが詰まっていて画期的。ぱっと見ただけではツメキリってわからないですよね。ガジェット感もあるから「使いたい!」ってなるんですよね。動かしているだけでも楽しい。

—ちなみに、これまではどういったツメキリを使っていたんですか?

外にいるときに必要になってコンビニでたまたま買った、至って普通のもの。たぶん貝印のものだと思います。地元から東京に出てくるときに実家から持ってきたものも、よくよく見ると貝印のものだった。それも20年ほどずっと使っていました。ツメキリってなかなか買い換えないですけど、こうやって新しいものを使うとテンションあがりますね。こっちのツメキリ(AUGER®︎ ツメキリ M Standard)も、指のツメを切るには抜群だった。「切った!」という感触がよくて。指のツメはM Standardで、足のツメはM Revolverで、と使い分けています。このヤスリ(AUGER®︎ ネイルファイル)もめっちゃ気持ちいいんですよね。

—早速ご愛用いただきありがとうございます。では最後に、河村さんにとっての「整える」とは。

なにかに向かう前にあるもの、だと思います。制作をする、人と会う、デートに行く。作品をつくる前の、素材を探しているときもある意味「整える」作業だし、ツメを切っているのもそう。完成に向かっていく前段階が整っていないとダメで、逆にそれがないと完成が成立しないもの。自分が整っていないと、そのあとも整えることはできないですからね。

※今回制作された河村康輔×AUGER®︎の原画は、2022年7月23日(土)~8月21日(日)代官山SPEAK FOR地下2階にて開催されるポップアップにおいて展示いたします。詳しくは/news/release/まで。

Photography_Hiroshi Nakamura, Edit&Text_Takuya Nakatani(DEGICO)

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