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IHクッキングヒーターの正しい使い方とは?押さえておきたいポイントを解説

全国各地でIHクッキングヒーター(IHコンロ)の普及が進んでいる昨今。建て替えやリフォームを計画中の人のなかには、IHを取り入れようか迷っている人も多いのではないでしょうか? 火災リスクの低さなどさまざまなメリットがあるIHですが、使い方を間違えると思わぬ事故を引き起こす可能性もあります。
そこでこの記事では、IHクッキングの第一人者と言われている脇雅世先生にお話を伺いながら、IHの仕組みや正しい使い方などを詳しく解説。さらにメリット・デメリットや、脇雅世先生がプロデュースされたO.E.Cシリーズから安心して使えるIH対応調理器具もご紹介します。IHを検討している人はぜひ読み進めてくださいね。
IHクッキングヒーターの仕組み

IHとは“Induction Heating(インダクションヒーティング)”の略語で、日本語では「電磁誘導加熱」と訳されます。
電磁誘導とは金属の近くで磁石を動かすことで電気が発生する現象で、この際の電流を「渦電流(うずでんりゅう)」と呼びます。
IHクッキングヒーターとはトッププレートの下部に渦巻き状のコイルを内蔵した電磁調理機器のこと。調理器具との間に渦電流を発生させることで、鍋底を直接加熱させる仕組みとなっています。
IHクッキングヒーターのメリット

まずはIHクッキングヒーターのメリットから見ていきましょう。
主なメリットは以下の5つです。
- 火を使わないので、火災リスクが低い
- お手入れが簡単
- 部屋が暑くならない
- 温度を正確に調節できる
- 高温になるまでが早い
詳しく解説します。
火を使わないので、火災リスクが低い
IHクッキングヒーターの大きな魅力は火を使わないこと。火災リスクが低いうえ、調理中に近くのモノへの燃え移りや袖のもらい火の心配がありません。
小さな子供や高齢の方はもちろん、料理に慣れていない人でも安心して使用できるでしょう。
お手入れが簡単
凹凸のある部品がないのもIHクッキングヒーターの特徴。トッププレートがフラットなので、油汚れや吹きこぼれも布巾でサッと拭くだけでキレイになります。五徳を取り外してゴシゴシ洗う必要もないため、ガスコンロよりも日々の手入れははるかに簡単です。
部屋が暑くならない
IHクッキングヒーターは調理器具そのものを加熱する構造なので、ガスコンロのように周囲の空気まで温めてしまうことはありません。熱がこもりにくいため部屋の温度が上昇しにくく、暑さが厳しい日でも快適に調理できます。
また炎を出さないことから、エアコンや扇風機の風があたっても立ち消えの心配がないのも美点です。
温度を正確に調節できる
IHクッキングヒーターは全ての操作をボタンでおこなうため、温度や火力を正確に調節できます。目視で火加減を調節するガスコンロと違い、とろ火から強火までボタンひとつで設定できるので、料理初心者にとっては心強いでしょう。
「揚げ物コース」を選べば、自動で最適な温度に調整されるため、天ぷらやトンカツもよりおいしく仕上がります。
高温になるまでが早い
IHクッキングヒーターは鍋やフライパンを直接発熱させる仕組みなので、無駄なくエネルギーを使えるのも特徴です。一般的なガスコンロの熱効率は約40~55%ですが、IHは約90%。つまり、ほとんどのエネルギーを調理に活かすことができるのです。
熱効率が優れていることから、立ち上がりも素早く、短時間で高温になります。湯沸かし時間や調理時間が短縮され、光熱費の節約にもつながるでしょう。
IHクッキングヒーターのデメリット

続いて、IHクッキングヒーターのデメリットについても解説していきます。
主なデメリットは以下の3つです。
- 対応する調理器具以外は使えない
- 鍋振りができない
- 停電中は使えない
詳しく解説します。
対応する調理器具以外は使えない
IHは鍋底を発熱させる仕組みのため、素材や底の形状などにより、使える調理器具が限定されます。一般的に鉄やステンレス、ホーローは使用できますが、土鍋やアルミ、耐熱ガラスは対応していません。
また、トッププレートと密着することが必須条件なので底が丸いものはNGです。素材が鉄であっても中華鍋は使用できません。さらに底径12~26cm以外の鍋やフライパンは使用できない機種が大半です。
鍋振りができない
IHクッキングヒーターはトッププレートに触れている調理器具を直接加熱する構造なので、鍋を少しでも離すと加熱が停止してしまいます。そのため鍋を振って具材を浮かせる「あおり炒め」はできません。
業務用では鍋振りに対応した機種も近年登場していますが、家庭への設置は難しいといえそうです。
停電中は使えない
IHクッキングヒーターのエネルギー源は電力であるため、停電中は一切使用できません。よって雷や地震、台風といった災害時に弱いのが大きなデメリットとなります。

IH料理研究家 脇先生コメント:
残念ながら停電中は、IHは使用できなくなります。しかし、大災害が起きて電気やガスが止まってしまった時、電気はガスより復旧が早いのも事実です。あまり予期したくない事ですが、大地震でガス管からガスが漏れ、そこに引火して火災が起きるといった2次被害もIHユーザーなら避けることができます。
IHクッキングヒーターの正しい使い方

ここからは、IHクッキングヒーターを使用するうえで注意すべきポイントや、正しい使い方をお伝えしていきます。
IHに適した調理器具を使う
上述のとおり、IHクッキングヒーターには使える調理器具と使えない調理器具があります。アルミや土鍋、耐熱ガラスを使用すると、トッププレートを傷つけてしまったり、ひいては温度センサーの故障につながってしまうことも。初めて利用するときには、調理器具が対応しているかどうか、よく確認するようにしましょう。
使用後のトッププレートには要注意
スイッチを切っても、トッププレートには一定時間熱さが残ります。うっかり表面を触ってしまうと火傷をする可能性があるので要注意です。またプラスチック容器をのせると、余熱で変形してしまう恐れがあります。
揚げ物は「揚げ物」コースを選ぶ
揚げ物をするときは、温度を自動で調整する「揚げ物コース」を選びましょう。また油量が十分でないと発煙や発火が生じることもあるので、適した量であるかしっかり確認しましょう。
調理中は離れない
IHクッキングヒーターは炎を出さないものの、発火の可能性がゼロという訳ではありません。調理中はその場を離れないように気をつけましょう。
心臓用ペースメーカーを使用している人は医師に必ず相談する
IHクッキングヒーターは電磁波を発生させる構造のため、ペースメーカーに影響を及ぼす可能性があります。使用している方は、導入前に必ず医師に相談してください。
磁気に弱いものを近づけない
キャッシュカードをはじめとする集積回路を内蔵したICカードは、IHクッキングヒーターに近づけることで破損する可能性があります。日頃から近づけないように心がけましょう。
液体の温め直しはかき混ぜながらおこなう
IHクッキングヒーターは鍋底から発熱させる構造のため、液体を温め直す際、突然吹き出す恐れがあります。これはガス火でも起こることで「突沸」と言います。火傷を避けるためにも、加熱する際はしっかりかき混ぜましょう。特にカレーや味噌汁、甘酒など濃度のあるものは要注意です。
吸気口・排気口をふさがない
吸気口や排気口にモノを置いてしまうと、目詰まり検知が働き、通電が停止してしまいます。調味料や油、鍋、布巾でふさがないように注意しましょう。

IH料理研究家 脇先生コメント:
鍋に入っていたものを温めている時突然噴き出すことを突沸現象と言います。でもこれはIHだからではなく、ガスコンロを使用していても起こります。電子レンジで粘度のある液体を温める時にも起きます。必ず混ぜながら温めることを心がけてください。
おすすめのIH調理器具

ガスと火を使わずに調理できるため、子供から高齢の方、さらには料理初心者まで安心して使えるIHクッキングヒーター。使用後もサッとひと拭きで手入れが完了するので、日々の家事の時短にもつながります。
近年では各メーカーからさまざまなIH対応の調理器具が販売されていますが、「間違いのないものを選びたい!」という人におすすめなのが、貝印の<o.e.c.>シリーズ。IHを長年活用してきた料理研究家・脇雅世さんとの共同開発によるブランドで、脇さんのノウハウが凝縮されています。ここでは同シリーズのいちおしアイテムをご紹介。IHの導入を検討している人はぜひ参考にしてみてくださいね。
o.e.c. フライパン 18cm (ふた付)
¥13,200 (税込)
o.e.c. フライパン 25cm (ふた付)
¥19,800 (税込)
o.e.c. 中華鍋28cm(ふた付)
¥22,000 (税込)
o.e.c. 卵焼き器 (スクレッパー付)
¥9,900 (税込)
o.e.c. ミニマ 卓上鍋23cm
¥13,200 (税込)
o.e.c. W角鍋
¥24,200 (税込)

IH料理研究家 脇先生コメント:
加熱調理器はガスかIHか、いろいろ議論がされています。炎が見える見えない、経済効率、安全性、自前の鍋、メンテナンスなど、どの面を重視するかで変わります。IHかガスか、優劣の問題ではありません。ご自身が調理する時どの側面を重視するかで決まると思います。
まとめ:IHクッキングヒーターのメリットを活かすには正しく使うことが大事

電気エネルギーで加熱する「IHクッキングヒーター」。火災リスクが低く、調理後のお手入れが簡単に済んだりと多くのメリットがあります。とはいえ、デメリットがまったくないわけではありません。思わぬ事故を避けるためにも、使い方には十分注意しましょう。今回の記事が、IHクッキングヒーターや調理器具選びの参考になれば幸いです。
IH調理に興味をお持ちの方は、IHクッキングの第一人者である料理研究家・脇 雅世さんと次女の加藤 巴里さんのYou Tubeチャンネルがおすすめです。
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IH料理研究家 / 脇 雅世(わき まさよ)
約10年フランスに滞在し、パリの料理学校やレストランで料理を習得。料理本を50冊以上出版、うち4冊はIH関連。24時間耐久レース「ルマン」でマツダチームの料理長を11年務める。「きょうの料理」、「あさイチ」、「料理の鉄人」他にTV出演。2008年より貝印㈱と共同で調理道具「o.e.c.」シリーズも手掛けている。2014年にフランス政府より農事功労章を受勲。次女で料理家の加藤巴里とオンライン教室を開催中。
https://www.trois-soeurs.online