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[対談]HYPEBEAST岡田雄一郎×AUGERディレクター鈴木 曜 @ 代官山 蔦屋書店

AUGER®のローンチを記念して、HYPEBEAST Japanマネージングディレクター(社長)兼カルチャートランスフォーメーションディレクター岡田・ジョシュア・雄一郎とAUGER®ブランドディレクター鈴木 曜によるトークイベントが、去る3月8日、代官山 蔦屋書店において行われた。身だしなみとファッション〜カルチャーの関係性から、AUGER®に込めた思い、そしてクリエイティビティについてまで。1時間半に渡り繰り広げられた濃密な対話を、ここではさらに濃縮してお届けしよう。

写真左)岡田・ジョシュア・雄一郎
大手広告会社ADKの東南アジア地域におけるCGO(最高事業成長責任者)を務め、4年半に渡り同社におけるトヨタ自動車の南&東南アジアのオリンピックパラリンピック事業をリードする。Cannes Lions国際クリエイティブ祭のヤング部門で日本人史上初となる最高賞のゴールド他、ONE SHOW、Spikes Asiaなどでの受賞多数。22年1月よりHYPEBEAST Japanのマネージングディレクター(社長)に就任。

写真右)鈴木 曜
富士重工業(現SUBARU)にてモータースポーツ・デジタルマーケティングを担当。その後、北欧のクリエイティブ企業、グレートワークス入社、最高経営責任者(CEO)となる。同社に籍を置きながら貝印の広報宣伝部・デザイン部・ブランド企画部部長を歴任し、現在はグレートワークスの最高クリエイティブ責任者(CCO)を務めながら、貝印の執行役員としてマーケティングを担当。WebクリエイションアワードWeb人賞やマーケターオブザイヤー2021等受賞歴多数。

 “社会の写し鏡”として自分をどう捉えるのか

岡田:今日のトークテーマである「身だしなみカルチャー先進国」というものを、いろいろなトピックに分けて(鈴木)曜さんと対談形式でお届けできればと思っております。まず、“身だしなみ”と“カルチャー”を一緒に語られることってあまりないと思うんですけど、AUGER®の開発プロセスの中で、そういった話は出ていましたか?

鈴木:“身だしなみ文化”を言葉で説明することってなかなか難しいと思っています。AUGER®でも「身だしなみを整える」とよく言うんですけど、“身だしなみ”という言葉自体が“整える”という意味も含まれているんじゃないかとか、曖昧というか、それに相対している気はします。

岡田:確かに“身だしなみ”って言葉として流通はしていますけど、実体として何なの? というところはありますね。まず身だしなみの定義を知るために、我々の定義の拠りどころとなる広辞苑の用語をお借りしたところ、【①身のまわりについての心がけ。頭髪や衣服を整え、ことばや態度をきちんとすること。②教養として、武芸・芸能などを身につけること。また、それらの技芸】というのがあります。

鈴木:武芸って身だしなみなんですね。教養も技自体も含めて身だしなみというところが新しい。

岡田:身だしなみからカルチャーを語る上で、どういった要点が必要なのかをカルチャーカンパニー的な目線で説明させていただくと、あることに対する何かしらの想いや知恵があって行動に至ると思うんですけど、一個人の行動だけではカルチャーにはなり得ない。そこから一歩先にコミュニティがあったり人とのつながりがあったりして、初めてカルチャーとしてシェアされる。この観点で考えたときに、そういったコミュニティとの関連性みたいなものは考えていますか?

鈴木:今回、身だしなみの一部である“見た目を整える”というブランドを作るにあたって考えていたことがあります。身だしなみって一個人としての行動だけど、社会的な営みと併存しているんじゃないかと。ブランドもそうで、個人がマーケットを構成しているわけで、結局、社会や市場がないと自分の身だしなみを整えようと思わないというか、自分以外の誰もいない場合、服すらも着る必要がないのでは? とも思います。その意味では社会の写し鏡として自分をどう捉えるのかというのが身だしなみの定義のひとつなのかなと。広辞苑の武芸もそうですけど、行動が意味するところとしては文化的な側面もあるんじゃないかと思いながらAUGER®の開発は進めていましたね。

岡田:まさに、“社会の写し鏡”というのはキーワードになりますよね。日本が身だしなみにおいて進んでいるのではないかという次のトピックにもつながります。

地理的要因が身だしなみやファッションに根ざしている

岡田:日本が身だしなみ先進国ということについて、曜さんの意見をお聞きしたいです。

鈴木:実際、日本が進んでいるのかどうかは分からないんですけど。

岡田:相当進んでいます。

鈴木:ジョシュアさんは海外の暮らしが長いので、むしろ僕よりも日本と海外の身だしなみ事情について詳しいと思うので、そのあたりの違いを聞きたいですね。

岡田:自分は海外17年と日本19年なので、ちょうど半々くらいですね。いろいろな文化を体験させてもらっています。ひとつは2歳の頃からアメリカのオハイオ州で10年半ほど過ごしましたが、NYやLAといったイケてる街ではなく、白人ばかりのミドルクラス層が多くいました。社会の風潮はみんな一緒で、アバクロンビーやエアロポステールを着ている人が多く、いわゆる西海岸のサーフブランドに憧れている。自然も多いですし、ライフスタイル的にはNYよりLAに共感できるからだと思います。

もうひとつはシンガポールに6年いました。そこも特殊な場所で、オハイオと違ってめちゃくちゃ多様なんですよ。国民の2/3くらいがシンガポール人で残りは海外からの移民で構成されていて、いろいろなカルチャーの坩堝になっている。気候的な影響が大きく、湿度90%の国だからとにかく機能性重視。みんなTシャツに短パンで、男性は髭を剃り、髪を短く切っていて、女性はすっぴんノーメイクの人が多い。これらを踏まえて二点、考察があります。日本において身だしなみが進んでいる理由として、ホスピタリティ的に自分本位ではなく他人本位で考えてきちんとしないといけないということが一点。もう一点はファッション的な側面。四季というのがあるからこそ、それに合わせた身だしなみの仕方があります。

鈴木:なるほど。その考察はすごく面白いと思います。僕もスウェーデンの企業にいるので、コロナ禍以前は年間100日以上、海外で過ごしていたんですけど。土地それぞれの置かれている状況というか、地理的要因が身だしなみやファッションに根ざしている感じはわかります。

身だしなみがメンタルに与える好影響

岡田:身だしなみがメンタルに対して影響することもあると思います。

鈴木:そうですね。今回、AUGER®のアンバサダーとしてプロバスケットプレイヤーの富樫(勇樹)さんと契約していますが、彼がアメリカで言われたのが「身だしなみをキメると気分が良くなってプレイの質も上がっていく」ということ。それは印象的でした。HYPEBEAST Japanの皆さんの出社の際のファッション事情も気になっています。

岡田:服装は自由にやらせてもらっていますね。先ほどの“写し鏡”の話にもつながるというか、結果そういう風になっていったというのが正確な話で。例えば、貝印さんに「HYPEBEASTでございます」って営業に行ったときに、HYPEBEASTはユースカルチャーでストリートで……ってプレゼンしたところで、僕がスーツ着てオールバックだったら全然説得力がないと思うんですよね。

鈴木:むしろ胡散臭いですね(笑)。

岡田:そうですよね。メンタルの話から脱線しちゃったんですけど、ファッションで気分がアガるということは個人的にも実証されています。コロナ禍で在宅ワークメインになったときに、自分は在宅ワークが合わなかったタイプでした。シンガポールではロックダウンの時期は家からまったく出られないんです。下手したら2週間、誰とも会わない。そんな状況下で、家でリラックスした格好でいると行動もリラックスしてしまい、ダラダラしてしまうんですよね(笑)。一方で、仕事に対しての気持ちが盛り上がらないなというのもしばらく続いていた。そこで、逆にスーツでパリッとキメて働いてみたらどうなるのかなと思い、実験的にやってみたら仕事が捗るようになりました。

鈴木:オンラインでの打ち合わせ相手はビックリするんじゃないんですか?

岡田:「どうしたの? 転職したの?」みたいになりましたね(笑)。だから、そういった身だしなみ自体が行動やメンタルを変える力があるんだなって。自分としたらアゲるつもりはなかったんですが、仕事に対しての効果はあったという話です。

鈴木:やはり在宅ワークが増えてON/OFFの切り替えってすごく曖昧になっている。僕なんかはワークライフバランスというものが壊れてしまっている人間なので、ワークライフインテグレーションの考え方なんですけど。どちらの場合でも、身だしなみやファッションという部分は、切り替えのためのスイッチになり得るんじゃないかと感じています。

身だしなみも時間も豊かにしてもらえたら

岡田:続いてのトピックが、日本の洗面台トランスフォーメーション事情なんですけど。

鈴木:今回、AUGER®というブランドを作るにあたって、洗面台の写真を約100枚ご提供してもらいました。正直、水まわりって汚れがちだし汚れ出したら目を背けがちになる。そんなことを考えると、AUGER®は置いておくだけでサマになるというか。そこを今回は意識しました。ジョシュアさんは洗面台について考えたことありますか?

岡田:ありますね。まさにコロナ禍で家で過ごす時間が多くなった分、自分の身の回りのアイテムを見直すきっかけになりました。こういう風にAUGER®のアイテムが並んでいると、統一感でワクワクしますよね。総合刃物メーカーの貝印だからこそ全部揃えられたんだなと感じます。

鈴木:そうですね。カミソリって蛍光色を使いがちなんですけど、今回は全部真っ黒にしてスムーサー部分もモノトーンにするくらい色味にはこだわりました。その統一感ってすごく大事だなと。たとえば新車に乗ると最初はきれいに乗るじゃないですか。でも一回傷ついたりするとそこからなし崩し的に汚くなる。AUGER®が整然と並ぶことによって、身だしなみも洗面台も時間も豊かにしてもらうことができたらいいなと思います。

岡田:曜さんが手がけるデザインに黒が多いことって何かこだわりがあったりするんですか?

鈴木:スウェーデンって日照時間が短いので、部屋の中を彩るカラフルなデザインが多いんです。それと、日本って情報を詰め込みがちなんですけど、北欧デザインは余白の取り方が秀逸。その集団に入っていく中で、同じことを僕がやっても難しいなと思いまして。日照時間が短いってことは長い夜っていいなと思い、黒をレイヤーしていく考え方に美しさを感じてやり始めました。全部の色を混ぜると黒になるというパーフェクトカラーみたいなイメージもいいなと。今回のAUGER®はその真骨頂で、しっかり黒と黒を重ねて黒くするというか、そういったことにこだわることのできたブランドなのかなと思っています。

岡田:いままでの黒デザイン史の中で、これだけ黒のレンジを揃えるというのは初めてですか?

鈴木:そうですね。貝印的にもすごく頑張って色を整えて揃えました。プラスチックひとつとっても、いろいろな整形がある中で、並べたときに同じ色が必ず出せるかというと、すごく大変だったと思います。そのあたりは厳格にルール化してすべてのプロダクトに適応して、こだわりを持って製品開発をしました。なかなか難しいところを今回は皆さんの頑張りで実現してくれたと思っています。

違ったものを掛け合わせることでクリエイティビティが発生する

岡田:最後に、この先の展望があればお聞きしたいなと思います。

鈴木:引き続き、洗面台を黒くしていきます。アイテムとしてもブランドのフィロソフィに合ったものをどんどん出していくつもりです。あと正直、身だしなみってツールだけでは成り立たないので、他ジャンルともコラボレーションをしていきたい。ブランドとしての共感者を募ってしっかりと身だしなみ文化自体を定着させていきたいと目論んでいます。

岡田:いまお聞きしていて、HYPEBEASTも黒が基調なので、なにかご一緒できるのではないかなと思ったんですけど……。

鈴木:コラボレーションしましょう。

岡田:いいんですか!?

鈴木:いまってそういう枠組み自体がないというか、縦割りで考えていたらダサいと思っています。コラボレーションって、お互いが無いものを掛け算していくもののはずで、そのベースにしっかりコンセプトのあることが大事だなと思っています。

岡田:まさにそうで、違ったものを掛け合わせることでもクリエイティビティが発生しますよね。0から1を生み出すクリエイティビティって世の中にほぼ無くて、やはり意外な組み合わせにアタックしていくという。だから刃物じゃないところに可能性があるんじゃないかと。何かかっこいいことを提案するときに、ファッションのブランドとブランドを掛け合わせて作ることはすでに起きていることですよね。だから僕らがやる必要はない。たとえば若者離れしている地域のことを、HYPEBEASTとしてクリエイティブに紹介していくことで面白いことが生まれる。若年層の課題意識から派生して、全然関係ないフィールドに入っていってコラボレーションするところに面白さが出ると思うんですよね。

鈴木:僕もスウェーデンにいた頃は、「クリエイティビティはコンビネーション」といったことをよく言われた。0→1は強いですけど、基本的に1+1でも十分戦えるというか。そういう意味でも新しいクリエイションを考えていくことって既存のものを組み合わせることでもある。もう一点、コラボレーションで大事なことは、ブランドとブランドの抱えるリソースが新しい課題にぶつかることだと思っていて、相手のブランドが抱える課題をこちらのリソースでどう解決していくのか。普段はやらない技術と出会ったときに0→1が発生するんだと思います。お互いのブランドが高まることを積極的にやっていければ、次につながる新しい技術革新が生まれる。だからこそファッションと組む刃物屋も、新しい扉を開く可能性がすごくあるなと思いますね。

岡田:そうですね。今日はありがとうございます。

※撮影時のみマスクを外しており、感染予防対策を徹底した上で運営しています

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