KAI FACT magazine
パリのファッションシーンで輝く職人が愛を込める帽子
FACT  No.06

パリのファッションシーンで輝く
職人が愛を込める帽子

長い歴史を持つメゾンブランドが数多く生まれているファッションの都、パリ。
それらは確かな技術を持つ職人による伝統的で手作業のものづくりに支えられている部分が大きい。
〈CheRi Bibi〉もフランスファッション界における帽子づくりを支えている存在だ。

すべてのデザインが学びとなる。

 〈ルイ・ヴィトン〉や〈ディオール〉などのブランドを手がけ、信頼を得ている〈CheRi Bibi〉。それでもまだまだものづくりについて学ぶことはあるというマリークレールさん。
「クリエイターやデザイナーから送られてくるデザイン画や写真を、求める形にするのが私の仕事。毎回新しいデザインなので、そのすべてが学びです」。
 デザイナーや消費者が満足いくプロダクトを生み出すのが職人のクラフトマンシップ。それには道具も大切だ。はさみは切る布によって12本ほどを使い分けている。その中には貝印のはさみもあった。
「私たちの仕事には軽くて、手の形にフィットして、真っ直ぐで、細いものがベスト」。
 マリークレールさんのすぐれた技術を受け継ぐ日本人がいる。日爪ノブキさんだ。「〝バリアを取り払え〟とよく言われます。決まったやり方はないということです」。
 マリークレールさんのものづくりには、個性を大切にする精神がある。
「技術を伝えたあとは、できれば私のことは忘れてほしい。それぞれが自分なりの帽子を作っていくことが大切。師匠から指摘された1㎜を忠実に守るより、1㎜ずれていても、自分で魂を込めて作ったほうが最終的に美しく仕上がります」。
 間違いのない技術と伝統を習得したうえで、アイデンティティを表現していく。革新は職人からも起こせる。
パリから離れた自然豊かな郊外にアトリエを移し、ストレスなく働く従業員。古いミシンやアイロンなど手作業も多く、ペット用の毛ブラシでファーを梳かしたり、装幀用の皮なめし棒を使ったり、縫製以外の専門道具も取り込んでいる。帽子の木型もたくさんのストックがある。しかしこれらを作る職人もどんどん減っているという。
1987年に独立し、パリで帽子づくりをスタートした〈CheRi Bibi〉のマリークレールさんと、彼女を「テクニックでも人間性でも」師と仰ぐ日爪ノブキさん。

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