1990年入社

技術 /
執行役員 部長

藤村 一

インタビューINTERVIEW

貝印の根本である
刃物技術を支える

私が入社して初めて配属されたのは、技術部門でした。
技術の部門のなかには、機械設計や生産技術、電気管理、設備保全、基礎研究、機械や金型の導入、メンテナンスなど、さまざまな業務があります。

現場では、設計図通りにものづくりを進めていても想定外のことが起こることがままあります。
それを、チームを組んだ人間たちと一緒にトライアンドエラーを繰り返して乗り越え、依頼通りの製品へと仕上げていきます。
朝から晩まで製品のことで頭がいっぱいでした。

現在、私はこの製造本部の技術という部門において、これらの業務を統括する役割をしています。

現場のいちばんの魅力は、
チームが一丸となった時の達成感

ものづくりの魅力は、なんといっても形が出来上がっていくところです。

私はプラモデルを作ったり、絵を描いたりするのが好きな子供でした。
入社して配属された技術部門では、工場でものを作ったり、新製品を立ち上げたりといった業務で、自分にぴったりの仕事と感じていました。

新製品の立ち上げなどは納期がタイトである上に、求められるスペックの高さが年々高まっている分野です。
しんどく感じる部分もありますが、そうした難題をチームが一丸となってやり遂げた時の達成感は、現場で味わえる最高のおもしろさであり、魅力といえるでしょう。

上の立場の人間が要望をキャッチし、現場に広げていく

現在、統括する立場となって心がけていることのひとつは、コミュニケーションです。
基本的なことではありますが、意思の疎通や情報共有など、それらをスムーズに伝達していくことが、今の私の役割だと考えています。

ただ、上から下まですべての人の意思の疎通を図ることは難しい。
今の状態が完璧であるとは思っていませんが、少なくとも、お客様や依頼された部門からの要望を、ものづくりの最前線に立つ私のような立場の人間がきちんとキャッチし、現場へ繋いでいき、広げていくことがまずは大切だと思って実践しています。

100年後、200年後にも続く企業を目指して

カミソリや包丁、ハサミといったツールは、いつの時代でも人々の暮らしに必要なものです。これからも決して無くならない製品だと思います。
そんな製品を100年以上作り続けてきた貝印が、今後も100年、200年と続いていくためには、現状維持をして安穏としていてはダメです。

私たちが長年手掛けてきた「ものづくり」は完全な状態であるとは思っていません。
100年以上の歴史があっても、基礎研究を積み重ねていけばいくほど、見えてくるものがあるからです。
少しでもステップアップを図り、もっと精度を高めていく必要があります。

精度を高めるために必要なのは、設備の向上やメンテナンスも重要ですが、私が最も大事だと思っているのは現場力です。

私なりの現場力の定義は、現場の社員が高いモチベーションで働き、自分で考え、自分でやるべきことを見つけ、自分の意思で仕事をやっていけるようになること。
そのために、自分の手掛けている仕事にどれだけの価値があるのかを知ってもらうことが必要です。

未来の貝印のために、ひとりでも多く、そうした意識の仲間を増やし、現場力の高い工場を作っていきたいと思っています。

失敗を恐れず、ひたすら前向きに取り組む姿勢を歓迎したい

昔の貝印は、新入社員には数ある現場に連れていき、熟練スタッフの背中を見て学びなさい、という人材育成をしていました。
しかし、組織が大きくなり、製品の数も飛躍的に伸びている昨今では、「背中を見せて覚えさせる」手法では、成長のスピードが追いつかないと感じています。
また、「何を学べばいいのか分からない」という声も聞こえてくるようになりました。

そこで、現在は、各人に任せるのではなく、ある程度こちらで成長の道筋を立てるようにしています。具体的には、この仕事ができるようになるためにはどのような勉強が必要なのかをこちらから指導するというやり方です。

これが最善であるとは思っていません。
しかし、我々が新人の頃と、今の新入社員とでは、時代背景も、物事が進んでいくスピードもまるで違います。今は、時代に合わせた人材育成を確立していく途上にあると考えています。

ただ、昔も今も変わらないのは、どんな人でも失敗することはあるということ。
失敗を恐れていては、職場で萎縮していく一方です。何事も前向きに捉えて仕事に取り組めるようなポジティブな姿勢を大切にして欲しいと思います。

失敗を恐れず、明るくひたむきに仕事にのめりこめるような人物が、貝印の新しい仲間になってくれることを期待しています。