100年後、200年後にも続く企業を目指して
カミソリや包丁、ハサミといったツールは、いつの時代でも人々の暮らしに必要なものです。これからも決して無くならない製品だと思います。
そんな製品を100年以上作り続けてきた貝印が、今後も100年、200年と続いていくためには、現状維持をして安穏としていてはダメです。
私たちが長年手掛けてきた「ものづくり」は完全な状態であるとは思っていません。
100年以上の歴史があっても、基礎研究を積み重ねていけばいくほど、見えてくるものがあるからです。
少しでもステップアップを図り、もっと精度を高めていく必要があります。
精度を高めるために必要なのは、設備の向上やメンテナンスも重要ですが、私が最も大事だと思っているのは現場力です。
私なりの現場力の定義は、現場の社員が高いモチベーションで働き、自分で考え、自分でやるべきことを見つけ、自分の意思で仕事をやっていけるようになること。
そのために、自分の手掛けている仕事にどれだけの価値があるのかを知ってもらうことが必要です。
未来の貝印のために、ひとりでも多く、そうした意識の仲間を増やし、現場力の高い工場を作っていきたいと思っています。
失敗を恐れず、ひたすら前向きに取り組む姿勢を歓迎したい
昔の貝印は、新入社員には数ある現場に連れていき、熟練スタッフの背中を見て学びなさい、という人材育成をしていました。
しかし、組織が大きくなり、製品の数も飛躍的に伸びている昨今では、「背中を見せて覚えさせる」手法では、成長のスピードが追いつかないと感じています。
また、「何を学べばいいのか分からない」という声も聞こえてくるようになりました。
そこで、現在は、各人に任せるのではなく、ある程度こちらで成長の道筋を立てるようにしています。具体的には、この仕事ができるようになるためにはどのような勉強が必要なのかをこちらから指導するというやり方です。
これが最善であるとは思っていません。
しかし、我々が新人の頃と、今の新入社員とでは、時代背景も、物事が進んでいくスピードもまるで違います。今は、時代に合わせた人材育成を確立していく途上にあると考えています。
ただ、昔も今も変わらないのは、どんな人でも失敗することはあるということ。
失敗を恐れていては、職場で萎縮していく一方です。何事も前向きに捉えて仕事に取り組めるようなポジティブな姿勢を大切にして欲しいと思います。
失敗を恐れず、明るくひたむきに仕事にのめりこめるような人物が、貝印の新しい仲間になってくれることを期待しています。